2003年 松下政経塾特別例会

 
◆大西 平一(岡山政経塾 二期生)

松下政経塾研修について
                                      平成15年10月14日


はじめに

 松下政経塾のみなさま、二日間本当にありがとうございました。松下幸之助の心が、まだ其処にあるかのようで、とても温かい思いでした。今回の研修は、直島研修とは違った意味で、自分を変化させるきっかけになったように思います。今振り返ると、松下政経塾の門は、単なる松下政経塾の入り口ではなく、世界・社会への自分の志を試す入り口であるように感じます。

古山塾頭のお話
 「趣意書」、「自修自得」、「切磋琢磨」、「現地現場主義」、「徳知体三位一体」。
古山塾頭をはじめ、塾生のみなさんが何度も何度もこのフレーズを口にした。最初はわからなかったが、何度か聞くにつれ、不思議とカッコイイ言葉に聞こえてくる。それぞれの言葉が今の松下政経塾ファミリーをつくってきたのだろう。
このような場で学ぶ松下政経塾生と話をしていて感じたことを一つだけ書くことにする。それは、塾生がものごとに対する自分の姿勢を持っているということだ。肩肘を張るわけでもなく、静かで力強い意志を感じる。これらは、趣意書をはじめ松下政経塾の精神が塾生の中に生きている証だと思う。先ほどの言葉を絶えず自分に言い聞かせながら、私も政経塾の精神を会得していきたい。

小沢一彦先生のお話
 先生の話を聞いて、全体的に感じたことは、今の日本のアンタッチャブルな部分に積極的に取り組もうとしていることだ。日本社会では、軍事・宗教・現代史・政治の面には、なるべく問題に触れるのを避けようとする傾向がある。(たとえば、この4つの問題を内包するものとして靖国神社がある。)先生の取り組みは、そういったものを避けることなく、世界の動きを時間軸・思想・軍事から捉えていて、勉強になった。と同時に、すべてを理解できなかったことに、いささか歯がゆさもを覚えている。

藤崎育子先生のお話
 「一日学校に行かず、三日行かず、一週間行かないと、もうその子は学校に行かなくなる・・・。」先生には引きこもりについて、平易な言葉で語っていただいた。私も仕事で営業をしていて、お客様と長く連絡をとっていないと、何となく会うのが億劫になってくる。それと同じだと感じた。今までは知らずにいた不登校の子供たちの思いを近くに感じることができた。
 また、先生は現場からみた世の中の常識のもろさを指摘してくださった。たとえば、マスコミの「学校にいかなくてもよい」、「少人数学級にすることにより、いじめが減少する」といった発言である。子供たちは学校に行かなければ社会性・集団行動を学べないし、教育を受けずに社会が受け入れてくれることなどあるはずがない。また、少人数学級は固定的な序列を作りやすく、多様的な価値を生み出しづらくする。塾生の質問に対して、教師には「人として心配すること」が大切なのだと強調されていたことに、教育のあり方の本質をみたように思う。

橘塾生の発表
 少子高齢化の問題は、ちょうど政治分科会で取り上げている。彼の発表は、問題の認識の仕方・諸外国への考察・プレゼンの仕方など、どれをとっても素晴らしく、学ぶところが多かった。
 その中でも特に印象的だったのは、幸せに関する考察で、私たちが忘れていた側面であった。人々にとって幸せな状態とはどのようなものか。それを抜きにして政治は語れない。世論調査によると、幸せの要素としては、健康・家族などが経済よりも比重が高いことがわかる。人口の減少、即ち不幸と捉えるのは適切ではないが、人々の幸せの要素を削らない努力をしていかなければならない。
 また、発表の中にあったプレストン効果という言葉に興味を持った。これは、各国の政府が高齢者層中心の政策に陥りやすいということだ。今の日本も、まさしく「投票に行く有権者=高齢者」という状況で、当然、そうした人々が政策の対象者の中心となっている。逆に、若年層に対する政策はともすれば遅れがちだ。バランスよく考え、実行していく必要性を気づかせてもらった。橘塾生には、今後とも研究経過を交換しながら、共に学ばせていただきたい。

上里塾生の発表
 少子高齢化により日本の人口動態は大きく変化し、経済力もまた、生産人口の減少に比例して、規模が縮小していくことが予想される。上里塾生の取り組みはこの衰退に関し、真正面から解決していく手段として面白く聞いた。とくに、岡山県では農村地域でより顕著な高齢化と人口減少が予想されるが、農業の担い手として外国人労働者を受け入れていくことが出来れば、農業生産の維持と田園風景の保全が可能になる。言語、最近の外国人犯罪の問題など、道は遠いと思われるが外国人労働者の受け入れに関心を持っていきたい。
 上里塾生には直島研修にもご参加いただいた。そのとき、彼に「志」とはなんだろうか?と聞いたことがある。彼は「行動を伴った思い」と答えた。今回の発表で、彼は実際に外国人労働者の職場に行き、一緒に働き、食事し、彼らの中に入っていることが分かる。私たちは外国人労働者と語るが、彼は「ジェームス、アリ」と名前で呼ぶ。松下幸之助塾主が望んだ「人間とは何か」にどちらの言葉が近づいているかは明白だ。上里塾生の「行動を伴う思い」のもたらすものの重要さを感じた。

終わりに
 この縁を持たせていただいた松下幸之助塾主に感謝いたします。