2011年 松下政経塾特別例会

 
◆瀧  幸郎(岡山政経塾 十期生)
平成23年9月27日
《松下政経塾合宿レポート》
  『人間を磨く』




【1.はじめに 】
今合宿のテーマは「松下幸之助の理念に学ぶ」である。松下政経塾で研修を受けられることは大変光栄であるが、入塾するにはあまりに敷居が高く感じられる私にとって、塾内で実際何が行われているのかは興味津々であった。
松下幸之助についての研究は数多く行われているが、実際に松下政経塾に足を運んだからこそ感じた学びを考察していきたい。


【2.徳・知・体】
松下政経塾に入塾するにあたり求められる資質として、徳・知・体とある。
知力・体力は訓練すれば向上できるが、徳はどうだろうか。松下政経塾公式ホームページには「徳:人間を磨き向上しようとする心」とある。
ここで、徳について調べてみると、旧字体は「コ」とあり、異字体(古字)として「悳」とある。直と心が重なっている異字体が表すように、徳とは素直な心、打算や先入観のない思いやりと考えることができる。
さらに調べてみると、国や宗教によってその解釈に若干の違いはあるものの、その考えは大まかに「他人のことを思いやる心」とある。ひとことで「愛」と表現するものもある。そして徳を積むということは「私」を捨てること。見返りや称賛を求めない無為な善行為とある。そして一番大事なのは、これらを続けることであり、継続によって初めて徳を高めることができるようである。
松下幸之助塾主筆の「素直」という書をお茶室で拝見させていただいた。塾主は毎朝「今日も一日素直でいれますように」と自分に言い聞かせていたらしい。まさに徳を積むことを体現されており、塾主がいかに徳の高い人間であったかを考えさせられる。


【3.松下政経塾での日常 】
松下政経塾では毎朝6時から早朝研修としてラジオ体操や清掃、さらに剣道やジョギングが行われる。なかでも約1時間かけて行われる清掃は、自分の身の回りを整えることはもちろんのこと、訪れる方々を気持ちよく迎えるためであり、近隣にゴミをまき散らさない事にもつながる。実際に体験してみると、始めは広い範囲を言いつけられて大変だと思っていたが、やっているうちにもっと離れた場所のゴミまで目につくようになり、気が付けば言われたよりも広い範囲の掃除を行っていた。一生懸命掃除をすることで雑念が晴れ、心が清々しい気分になるのを感じた。これを毎朝続けることにより、徳を積むことにも繋がるのではないだろうか。
毎朝の朝会では黎明の鐘に耳を澄まし、その後塾是・塾訓・五誓の唱和がある。そのなかで特に私に響いたのは、五誓の「自主自立の事」と「万事研修の事」である。
「他を頼り人をあてにしていては事が進まない」。つい先輩や同僚をあてにしてしまうことがある私にとって耳の痛い話であるが、だからこそ納得のいく誓いであった。もうひとつの「万物ことごとくわが師となる」については、どんな簡単な仕事だろうと学びがあるということを忘れずに、常に前向きに生きていくことを再度確認するものであった。


【4.自由行動 】
2日目午後の自由行動は、靖国神社参拝と遊就館見学を選択した。靖国神社に関しては様々な批判があるようだが、実際にこの目で見てみると、同年代だったであろう当時の人々のその精神にただただ感服するのみである。当時の人々のその想いに少しでも応えられるよう、今を生きる我々にできることを真剣にやろうと心に強く誓いました。


【5.まとめ 】
塾主は日本の未来を憂い、リーダーとなる人材の育成のために私財70億円を投じた。かつての年収が約7億円だったそうなので、およそ10年分の資産を未来の為に投資したことになる。私心を捨て、真に国家と国民を案じたからこそできる行為であろう。金額の大小を抜きにしても、私たち凡人には到底真似できないことである。塾主の徳の高さはそのまま人望の厚さになり、これこそが「経営の神様」といわれる所以であろう。
今合宿では普段あまり議論することのないテーマである「徳」について深く考えさせていただいた。このような貴重な機会を与えてくださいました小山事務局長はじめ松下政経塾の関係者の皆さま、同期塾生に心より感謝申し上げます。