2010年 松下政経塾特別例会

 
◆和田 治郎(岡山政経塾 九期生)

《松下政経塾合宿レポート》
  理念の力




【1.はじめに 】
 まずもって、現在多くの政治家を輩出し、日本の政治に大きな影響を及ぼしている松下政経塾とはどのようなところなのか、また松下政経塾を創立した故松下幸之助氏の想いはどのようなものであったのかについて体感できる機会を頂いたことに感謝致します。

【2.松下政経塾】
 設立から今日までの松下政経塾は、将来の指導者の育成という塾主の故松下幸之助氏の想いに適うものだと思いますが、ご自身が亡くなられてなお、塾が目的を果たし続けられるのは、コンセプトの明確さと正しさに集約されていると思いました。
 松下政経塾の設立趣意書には以下のようなことが書かれています。「日本を理想的な姿に近づけるためには、国家の未来を開く長期的展望、正しく明確な基本理念が必要であり、それを具現していく指導者もまた必要である。松下政経塾は将来の指導者たりうる逸材の開発と育成を目的とし、そのような目的から公共的機関として運営することが肝要である。」また、塾是、塾訓、五誓は、環境変化があったとしても、その内容は見直しが不要のものであり、日常生活の中でこれらを叩き込めば何をするにしても道から外れることはないでしょう。
 やはり長期的な目標を達成するには、しっかりとしたコンセプト、理念が重要であり、目標達成のための方法は時代が変わっても変わらないものだと思いました。
 塾の設立には、故松下幸之助氏は70億円の私財を投じられ、トータルで100億円超を要したとのことでしたが、現在の松下政経塾卒塾者の政治における影響を考えれば、設立趣意書に書かれている「公共的機関として運営することが肝要」は納得するところです。


【3.講義】
(松下幸之助氏のVTR及び古山塾頭の講義)
 「自習自得」、松下政経塾の人材育成の方針はこの言葉に尽きます。ある程度の成功を収めるだけなら、教えてもらう段階を経て先例を参考にすることで十分かもしれません。しかし、自習自得できる人間でなければその道の名人の域に達することはできないのでしょう。
 5月例会にて松下政経塾の3期生の本間正人氏が松下幸之助氏の口調マネをされました。その時は似ているのかさっぱり判らず、リアクションできませんでしたが、「よく似ていたんだな、リアクションできず申し訳なかった」と心の中でお詫び申し上げました。

(茅ヶ崎市議 海老名健太朗氏)
 海老名氏の出身は茅ヶ崎ではないとのことでしたが、茅ヶ崎を愛していることが十二分に伝わってきました。また、あるべき方向性は何かに基づいて行動されていることもよく判りました。海老名市議のように、既存の方法を踏襲するのではなく、あるべき方向は何かを議論して変えていくべきものは変えていくといった政治が増えれば地域は良くなるだろうと思います。

(藤沢市長 海老根靖典氏)
 海老根氏から感じたことは、民間、行政機関に関わらず、トップの影響力は大きいということでした。また、トップ(リーダー)に必要とされる要素は多々あげられるところですが、海老根氏から特に受けた印象は「明るさ、軽やかさ」でした。藤沢市の場合は「市民経営」(=市民感覚の経営、市民ひとりひとりが経営)に注力し、海老根氏によると藤沢市の職員はその実現のために相当苦労されているとのことでしたが、トップの「明るさ、軽やかさ」が周りを前向きにし、「市民経営」を推進しているのだと感じました。トップによって行政機関も変わるものだと思いましたが、海老根氏は何期も市長をさせるつもりはないとのことで、トップが変わった場合に、現在の運営が維持できるのだろうかとも思いました。行政機関でもトップの交代によって、それまでの方針とは全く異なる方針に変わることもありますが、トップが誰であれ、藤沢市の「市民経営」のように継続されるべきものは組織に根付かせることも必要だと思いました。

(29期 高橋宏和氏)
 日本の医療についての現状について発表して頂きました。日本の医療は誰でも安価に医療サービスを受けることができるといった良い面もありますが、サービスを受けるべきでない人がサービスを受けている状況もあり、今回の発表の質疑でもあげられた救急車の例などもその一例だと思います。人の行動をある方向に持っていこうとする場合、最も効果がある方法は適正な価格付けであり、個人的には日本の医療は市場経済をもっと取り入れるべきだと思いますが、約5%の医療機関しか原価計算を行っていないとのことで、現在の状況では適正な価格付けは不可能だということも判りました。
 また、多くの医療機関が赤字に陥り、医療サービスの継続性が危ぶまれるとのことでした。組織として継続していくためには、医療機関も適切な経営を行う必要がありますが、医療機関に限らず専門的サービスの組織では専門家が経営を行っていることが多く見られます。しかし、専門家が優れた経営者になれるとは限らず、特に赤字に陥っている医療機関については、経営のプロに経営を委託または参画させたほうがよいと思いました。原価計算も直接的には医療サービスの向上に結びつくものではないため、ほとんどの医療機関で実施されていないと思われますが、価格付けのためだけでなく適切な経営・管理のためにも必要です。医者不足と言われる昨今ですが、医療機関については管理レベルの向上も必要だと思いました。


【4.二日目自由行動】
 普段であれば絶対に行かないであろう、国会議事堂と靖国神社に行きました。国会議事堂も実際行ってみるとイメージよりはるかに大きく、重厚なものでした。また、靖国神社は約3時間弱時間を割いたのですが、併設されている遊就館には主に日本の近代の軍事関係の資料が数多く展示されており、それらをつぶさに見るにはとても数時間では足りず1日は必要だと思いましたが、日本の軍事についての歴史を通覧することができ、非常に有意義なものとなりました。


【5.終わりに】
 現在は昔に比べれば現場に行かずとも得られる情報は膨大にありますが、やはり何事も現場に行って体感しなければ分かりえないものがあり、重要なものについては、実際に体感することが必要だと再認識した2日間でした。