2010年 松下政経塾特別例会

 
◆楳田 祐三(岡山政経塾 九期生)

《松下政経塾合宿レポート》
  “松下政経塾での学び”




【はじめに 】
 開塾以来30年が経ち、現政権閣僚含め、多くの首長、国会・地方議会議員、各会エリートと、日本の舵取りを担う人材等240余名を輩出してきた松下政経塾、そんな松下政経塾を創った松下幸之助の理念を学ぶとともに、現役塾生の生活を体験し、実際に交流することができる貴重な機会を心待ちにしていました。


【古山塾頭の講義と松下幸之助塾主の講義】
 松下幸之助塾主の講義ビデオの前に、古山和宏塾頭の講義を拝聴しました。古山塾頭からは、松下政経塾の設立趣意として、国家国民の真の繁栄と世界への貢献を目指すべく理念と方策を研究し、そして実際にその理念と方策を“実現し得る人物”を育成することと伺いました。設立から30年が経つ今日、松下政経塾の活動理念は世に知られることとなっていますが、開塾当初には松下電器自体の幹部養成施設として捉えられるなど懐疑的にみられることもあったそうです。そんな世間の目はよそに設立趣意に違わぬ活動を継続し、卒塾生と今日の松下政経塾の隆盛に至っている礎でもある松下幸之助塾主のお言葉の一つ一つは重厚で印象深いものでした。なかでも、師匠を持たずに自らの力で剣の聖人にまで上り詰めた剣豪宮本武蔵に言及して、“自修自得”の姿勢こそが、確かな人材の育成につながることを説かれていましたが、御自身の御経験を踏まえ悟った境地なのであろうと感銘を受けました。難関を越えて、松下政経塾で学ぶ者は、一般的知識、教養については既習得し社会経験も踏まえた有志であると思われますが、そのような人材がそれぞれの枠組みを超えて、成長していくプロセスとして、必須な姿勢と理解しました。


【海老名健太朗・茅ヶ崎市議、海老根靖典・藤沢市長】
 松下政経塾卒塾生で、茅ヶ崎市議として御活躍される海老名健太朗氏、同じく藤沢市長として御活躍の海老根靖典氏より御講義頂きました。
 まず海老名市議の講義では、松下政経塾が構えられた茅ヶ崎の地を第二の郷土として、心の底から敬愛し、市の安泰と発展を願って多くのアイデアとともに活動される同氏の純粋で崇高な志が印象に残りました。市議においては、無党派という位置づけから自分の政策理念を貫くのが困難なことがあっても、全国に情報を発信し御自身の考える政策理念の妥当性・正当性の評価を確認するとともに、同志を募り市議外部からの大きな影響力となって市議を揺るがすようなベクトルを創るという発想にダイナミズムが感じられ、非常に意義深い講義でした。
 次に海老根市長の講義では、藤沢市の長期展望に立ち、洗練された政治手腕で確かな業績を重ねていくことで日々進化発展を遂げつつある姿が印象に残りました。全国で、行き詰まる地方行政が問題視されるなかで、市長が考えられたのが、“行政も民間の力を借りていく時代”、“人を呼ぶために知恵を出す”ということでした。なかでも市民経営の市政、地域経営会議など、とにかく地域・市民に密着し、同じ目線で考えていくことが重要という斬新なアイデアで、発展に向けて前進し続ける“活きた”市政の藤沢市が感じられ、海老根市長の比類なき功績を感じずにはいられませんでした。後半では、御自身の松下政経塾時代の学びにも触れられ、“成功の要諦は成功するまで続けること”、“コップに半分水がある。半分しかないのか、まだ半分も水があると捉えるかで勝負は変わる”、非常に印象的で講義の後も何度も思い起こす言葉でした。
 海老名市議のような直向きな姿勢と弛まぬ努力、海老根市長の掲げられたV.S.O.P (20-30代はVarietyを養い、30-40代でSpecialtyを深め、40-50代でOriginalityを高め、50-60代はPersonalityを深める)、外科医として走り続ける35歳、自分の専門職だけにとらわれることなく幅広い視野とともに志を高く持ち、今回の講義を活かして、ひたすら前向きに研鑽を積んでいきたいところです。


【現役松下政経塾生との交流と高橋宏和塾生の講義】
 志高く、松下政経塾での研修する現役塾生との交流は非常に有意義なものでした。明日の日本を担う人材養成、リーダーとしての資質という観点で、高い倍率を勝ち抜き入塾資格を勝ち取った現役塾生達の目的・問題意識の高さと、各々が掲げる目標に向かう揺るぎない信念に触れ、こちらまで熱い思いが込み上げてきました。塾生との話のなかで聞いた言葉ですが、“批評・批判だけなら誰でもできる。大切なのは、未来を憂い、問題点をどうするべきか考えることだ。そして私は、考えるだけでなく、それを実行していく役割を担っていきたい。そう考えて、松下政経塾の門をたたくことを決めた”。静かに語られた言葉でしたが、奥底の情熱が感じられ、日々の研修と弛まぬ努力が自信の裏付けにもなりつつあるのか、そんな彼の活躍が近い将来訪れるであろうことを期待とともに感じずにはいれませんでした。
 そして最終日の高橋宏和氏の講演は、昨今の医療問題に関する研究報告でした。破綻する地域医療施設、医師の偏在と疲弊する勤務医、医師の労働意欲の低下と多岐にわたるものでした。高橋氏の活動に感服したのは、松下政経塾5誓にも掲げられている“自主自立”、“万事研修”、“先駆開拓”を実践していることでした。御自身の研究活動に必要であれば、日本全国を飛び回り、現場で働く医師・医療スタッフ、そして時には患者とも連携して積極的な情報収集・解析を行い問題点解決に向け糸口を探る。そして時には、一つの病院からでも、御自身の考える解決策を提案して、実際に結果を出していくという積極的な姿勢がありました。また現在、医療問題に対して、日本医師会を始めとする種々の団体が活動する中で、今後の医療を担っていく中堅・若手医師を中心とした組織構築を提案され、情報ネットワーク「MediCorazon」の実現にむけて既に始動されていました。
 今回の貴重な現役塾生との交流で、自分自身のモチベーションを高めさせて頂いた思いです。今後の彼等の活躍をお祈りするとともに、自分と同世代の彼等を常に意識して、自分自身も研鑽を続け、情報交換を通じてお互いを高め合うことができればと願うところです。


【さいごに】
 自修自得、“他人を頼り、人をあてにしていても事は進まない。自らの力で、自らの足で歩いてこそ他の共鳴も得られ、知恵も力も集まって良い成果がもたらされる”。今後の自分自身の課題として、先にあるものが何かを常に考え、その先に進むために何をすべきかを常に考え、行動することに進化があると銘記して、自己研鑽を続けて行かなければならないと決意するところです。